iDeCoと退職金の受け取り方|「5年ルール」が「10年ルール」に変わった2026年からの注意点を試算で解説

iDeCoと退職金の10年ルール:自宅のテーブルで退職金の書類と電卓を前に受け取り方を考える50代の男性 投資・制度の活用

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「iDeCoは60歳で一時金、退職金はそのあと。5年空ければ税金は大丈夫」――そう聞いたことがある方は、少し注意が必要です。2025年度の税制改正で、iDeCoの一時金と退職金の受け取り時期の調整ルールが変わり、これまでの「5年ルール」は、2026年から実質「10年ルール」になりました。この記事では、何が変わったのか、どんな人に影響があるのかを、仮の数字を使ってわかりやすく整理します。

この記事でわかること

  • iDeCoを受け取るときの3つの方法と、かかる税金の基本
  • 「5年ルール」が「10年ルール」に変わった中身と、始まる時期
  • 受け取り時期によって税金がどれくらい変わるか(仮の数字での試算)
  • これから考えておきたい受け取り方の選択肢

先に結論をお伝えすると、iDeCoを一時金で受け取ってから退職金を受け取る場合、2026年以後は「10年以上」空けないと、退職金にかかる税金が増えることがあります。ただし、影響が出るかどうかは、退職金の額・勤続年数・iDeCoの加入年数によって変わります。まずは仕組みを知り、自分の会社の退職金制度を確認するところから始めましょう。

iDeCoの受け取り方は3つ|税金のかかり方が違う

iDeCoで積み立てたお金は、原則として60歳から75歳までの間に受け取りを始めます。受け取り方は、次の3つから選びます。

受け取り方税金の区分使える控除
一時金(まとめて受け取る)退職所得退職所得控除
年金(分割して受け取る)雑所得(公的年金等)公的年金等控除
一時金と年金の併用上の2つの組み合わせ両方

一時金で受け取ると、会社の退職金と同じ「退職所得」として扱われます。退職所得控除は、勤続年数(iDeCoの場合は掛金を出した年数)に応じて大きくなります。

退職所得控除の計算方法(国税庁)

  • 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数
  • 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
  • 控除しきれなかった部分は、さらに2分の1にしてから税金を計算

たとえば勤続38年なら、800万円+70万円×18年=2,060万円まで税金がかかりません。退職所得はとても優遇されているため、「この控除枠をどう使うか」が受け取り方を考えるポイントになります。

「5年ルール」が「10年ルール」に変わった|2026年から

iDeCoの一時金と会社の退職金を両方受け取る人は、同じ控除枠を二重に使いすぎないように、受け取り時期が近いと控除が調整(減額)されます。この「近い」の範囲が、今回変わりました。

受け取る順番改正前改正後(2026年分〜)
iDeCoの一時金が先 → 退職金があと前年以前4年内のiDeCo一時金を調整
(=5年空ければ調整なし)
前年以前9年内のiDeCo一時金を調整
(=10年空けないと調整あり)
退職金が先 → iDeCoの一時金があと前年以前19年内の退職金を調整(変更なし)

※国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」の改正内容、国税庁タックスアンサーNo.2732(令和8年4月1日現在法令等)をもとに整理(2026年10月14日確認)。2026年1月1日以後に受け取るiDeCo(確定拠出年金)の一時金が対象で、令和8年(2026年)分以後の所得税から適用されます。

これまでよく言われていた「iDeCoを60歳で一時金、退職金を65歳で受け取れば控除をフルに使える」という方法は、 2026年以後は、間が9年以内なら退職金側の控除が減る ことになります。

受け取り時期で税金はどれくらい変わる?|仮の数字で試算

ここでは、イメージをつかむために仮の数字で試算します。実際の税額は、退職金の額や勤続年数、会社の制度によって変わります。

試算の前提(仮の例)

  • 22歳で入社し、65歳で退職(勤続43年)。退職金2,200万円
  • iDeCoは45歳〜60歳の15年間加入し、60歳で一時金600万円を受け取る
  • iDeCoの加入期間(15年)は、会社の勤続期間とすべて重なっている
  • ほかの所得や控除は考えない。税率は2026年10月時点の制度で計算

iDeCo一時金(60歳)の税金

加入15年なので、退職所得控除は40万円×15年=600万円。一時金600万円は全額控除の範囲内で、税金は0円です。

退職金(65歳)の税金|改正前と改正後の比較

項目改正前(5年空ければOK)改正後(9年内は調整)
勤続43年の退職所得控除2,410万円2,410万円
iDeCoとの重複による減額なし−600万円(重複15年分)
使える控除2,410万円1,810万円
課税される退職所得0円(2,200万−1,810万)÷2=195万円
税金の目安(所得税+住民税)0円約29.5万円

※税金の目安は、課税退職所得195万円に所得税率5%(復興特別所得税2.1%を含めて約9.95万円)と住民税10%(19.5万円)をかけた概算です。実際の計算は、勤務先や税務署、FPなどに確認してください。

この例では、受け取りの順番と間隔は同じでも、ルールが変わっただけで約30万円の差が出ます。退職金が控除枠より十分少ない人は影響が出ないこともありますが、退職金が多い人、iDeCoの加入年数が長い人ほど影響を受けやすくなります。

参考:同じ年にまとめて受け取った場合

同じ前提で、iDeCoの一時金と退職金を同じ年(65歳)にまとめて受け取った場合も見ておきましょう。同じ年に受け取ると、2つは合算され、勤続期間は重なりを除いた43年で控除を計算します。

  • 収入の合計:2,200万円+600万円=2,800万円
  • 退職所得控除:2,410万円(勤続43年)
  • 課税される退職所得:(2,800万円−2,410万円)÷2=195万円

この例では、改正後に「5年空けて受け取る」場合と同じ195万円が課税対象になります。改正後は、9年以内に受け取ると、同じ年にまとめて受け取るのと近い結果になると考えるとイメージしやすいでしょう。

これから考えたい受け取り方の選択肢

1.iDeCoは「年金」で受け取る

年金形式で受け取る部分は「退職所得」ではないため、今回の退職金との調整の対象になりません。そのかわり、公的年金と合わせて雑所得として課税され、年金の受取額によっては税金や社会保険料に影響することがあります。

2.一時金と年金を組み合わせる

退職所得控除の枠に収まる分だけを一時金にして、残りを年金で受け取る方法です。控除をむだにしにくい一方で、手続きや受け取り計画はやや複雑になります。

3.受け取り時期を10年以上ずらす

iDeCoの受け取りは75歳まで遅らせることができます。たとえば退職金を60歳で受け取る場合、iDeCoの一時金を後にするには「19年内」の調整があるため、20年空けるのは現実的ではありません。逆に、iDeCoを先に受け取る場合は、退職金まで10年空ける必要があります。会社の退職金の時期と照らし合わせて、現実的かどうかを確認しましょう。

4.まず会社の退職金制度を確認する

退職金の額、受け取る時期、企業年金を一時金と年金のどちらで受け取れるかは、会社によって違います。iDeCoの受け取り方は、会社の制度がわかってはじめて決められます。

注意したいポイント

  • この記事の試算は仮の数字です。実際の税額は個人の状況で変わります
  • 税制はこれからも変わる可能性があります。受け取る前に最新のルールを確認しましょう
  • 年金で受け取る場合は、受け取りのたびに手数料がかかる金融機関があります
  • 2026年12月からは70歳未満までiDeCoに加入できるようになり、受け取る時期の選択肢も広がります。加入条件はiDeCo改正で60代も加入できる?70歳まで積み立てられる条件と2029年11月までの特例で解説しています

筆者の場合|iDeCoに入るなら「出口」まで考えてから

筆者(とも)は今、NISAを優先していて、iDeCoにはまだ加入していません。会社には企業年金があり、加入するなら掛金の上限だけでなく、退職金とどう受け取りを分けるかまで考えておきたいと思っています。

iDeCoは「入るときの節税」が注目されがちですが、受け取るときにも税金が関わります。今回のルール変更を知って、入口(掛金)と出口(受け取り方)をセットで考えることが大切だとあらためて感じました。

退職金・企業年金・iDeCo・公的年金の組み合わせは人によって違い、自分だけで判断するのは難しい部分です。受け取り方で迷ったら、お金の専門家であるFPに一度整理してもらうのも一つの方法です。

これからiDeCoを始める方は、掛金の上限をiDeCo改正で会社員の掛金上限はいくら?企業年金がある人の計算方法を例で解説で確認し、金融機関はiDeCoの金融機関の選び方を参考に比べてみてください。

よくある疑問Q&A

Q.会社の企業型DC(企業型確定拠出年金)の一時金も対象ですか?

A.今回の見直しは、確定拠出年金法にもとづく老齢給付金の一時金が対象です。iDeCoだけでなく、企業型DCの一時金も同じように考える必要があります。会社に企業型DCがある人は、iDeCoと合わせて受け取り計画を立てましょう。

Q.2025年までにiDeCoを一時金で受け取った人にも影響はありますか?

A.「9年内」のルールの対象になるのは、2026年1月1日以後に受け取った確定拠出年金の一時金です。2025年までに受け取った一時金は、これまでどおり「4年内」で調整されます。これからiDeCoを受け取る人が主な対象です。

Q.年金で受け取れば、必ず得になりますか?

A.必ずではありません。年金で受け取ると、公的年金などと合わせた金額で税金が計算され、収入によっては住民税や国民健康保険料などが増えることもあります。また、受け取りのたびに手数料がかかる場合があります。一時金・年金・併用のどれがよいかは、退職金や公的年金の額とあわせて比べることが大切です。

今日からできること

受け取り方を考えるためのチェックリスト

  1. 会社の就業規則や福利厚生のページで、退職金・企業年金の制度を確認する
  2. 退職金を何歳で、いくらくらい受け取れそうかを把握する
  3. iDeCoに加入している人は、加入年数と残高を確認する
  4. 「一時金・年金・併用」のどれが合いそうか、仮の数字で考えてみる
  5. 迷ったら、受け取る数年前までにFPや勤務先の担当者に相談する

まとめ|iDeCoは「受け取り方」まで考えて使う

2026年から、iDeCoの一時金を受け取ってから退職金を受け取るまでの調整期間が、4年から9年に延びました。これまでの「5年空ければOK」は、実質「10年空ける」必要があります。

影響が出るかどうかは、退職金の額や加入年数によって変わります。年金での受け取りや併用も含めて、自分に合う方法を早めに考えておきましょう。

iDeCoは、始める前に「どう受け取るか」をイメージしておくと、最後まで安心して使えます。